
まだ豊胸ではないとしても
テラスで朝食をとっていたところに迷い込んできたネコである。
野良といっても、人に慣れていて毛艶もいい。
「紹介してよ」と必ず言われるタイプのコだ。
そのたびに、「あのね、このコは本当はそんなによくない」と言わなきゃならなくて、私がよっぽどイヤな女に思われてしまう。
私がつらつら考えるに、写真映りのいい女というのは、顔立ちが派手、ということでもないようだ。
かえってケバくなるということもある。
それよりも顔の輪郭が整っているという要素が大きい。
素人の使うカメラだと、全体的に白くとぶので、多少鼻が低くても関係ない。
それよりも笑った時の口もとの愛らしさが肝心であろう。
あるカメラマンの人から聞いたのであるが、顔の下に少しでも白いものがあると、美人度がぐっとアップするというのだ。
スキー場でのあの栄光を思い出せばよい。
雪の中で撮った写真はたいていの場合、大切な1枚となり、手帳の中にしまわれているはずである。
カメラマンの人がさらに言うには、膝の上に白いハンカチを1枚敷くだけでも他の人と差がといった感じが、寝グセのついた髪やすっぴんの顔に表れているのである。
海岸に散歩に行く時も、私は一応DKNYのロングワンピースを着ているのに、彼女ときたらトレーナーにジーンズだ。
完璧に休日状態で、私のまわりの女友だちにその写真は大いにうけた。
ところで実物はそうでもないのに、写真となるとやたらキレイに見える女の記号というものはシロウトの私らでもいろいろ苦心しているのだから、女優と呼ばれる人の努力は、それこそ涙ぐましいものがある。
カメラ映りを少しでもよくするために、女優さんがいちばん気を使い、ゴマをするのは監督さんやディレクターではなく、照明マンだという。
Sさんが照明マンと結婚した時、へえー、有名女優が裏方のジミな人とするんだと驚いたものであるが、映画会社の人に言わせるとさもありなんという感じなのだそうだ。
それよりもすごいのは、このあいだかなりの年配の某大女優さんが歩いているシーンを撮った時のことで、2メートルおきに若い照明マンが待機していたというからすごい。
女優が歩くすべての時間、下からカーッと強い照明をあてるためだ。
これによって、彼女の識やシミはすべて吹っ飛ぶ仕掛けだ。
こんなことをしなくても、10人の照明マンがいなくても、強い味方がある。
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